VRChatでグループワークをする意義

近年、社会全体でメンタルヘルスに対する関心が高まり、早期予防や多様な支援の必要性が強調されています。これに伴い、メタバースプラットフォームの一つであるVRChatを活用し対話型のグループワークがメンタルヘルス支援となり得るのではという気づきからイベントははじまりました。


「VRC悩み~ティング」というグループワークはいくつかの理論や技法を組み合わせ、悩みの共有から生まれる新しいメンタルヘルス支援の可能性を模索することを目的としています。


メタバース特有の匿名性とアバターを介した豊かな自己表現は、グループワークを通じて安心して悩みを共有できる心理的安全性を高め、参加者同士の共感や他者理解を促進すると考えます。これは、物理的・社会的制約を超えて人々が交流し、意見交換を行えるメタバースの利点を活かすことで、従来の対面型のアプローチと同様な効果をメタバースという新しい空間でも再現できることを示唆しています。

これまでの経緯

  • 主催PAY2が5年来の友人から誘われて始めたVRChat、メタバースで出会う人達の中には人間関係、仕事、病気、恋愛など様々に苦悩する人達がいた。大学時代の専門領域は精神保健福祉で、その中でも特にグループワークを積極的に学んでおり、メタバースという空間が、コミュニティ活動の新たな場として機能する可能性があると体感し、メタバース上での実践を始めようと考えた。

  • 2024年5月29日から2024年11月末時点で、のべ300人以上とグループワークを実施。

  • 2024年12月15日 日本精神障害者リハビリテーション学会第31回東京お台場大会にて実践を口演発表。

  • 2025年1月からより多くの人にグループワークを広めていけるようスタッフを増員。

  • 2025年2月15日バーチャルライフマガジンにイベント紹介記事「もうひとりで悩まない。あなたの悩み《VRC悩み~ティング》で分かち合いませんか?」掲載。

  • 2025年3月25日 リカバリー全国フォーラム2024 分科会7「自助グループの多様化と未来」にシンポジスト登壇。

  • 2025年4月時点でのべ530名以上とグループワークを実施。

  • 2025年5月28日VRC悩み~ティング1周年記念特別イベント「~これが悩みのAnother Style~」を実施。

VRC悩み~ティングにかける主催PAY2の想い

悩みとは誰かとの関係や自分の置かれた状況の中で「どうしたらいいのか」、「自分は何を大切にしたいのか」といったもやもや感から生まれるものと考えます。過去の失敗や後悔、今の不安、これから起こるかもしれないことなど様々に思考を行き来しながら、結局は「今」の心に重くのしかかってくるものです。

多くの場合、悩みを「直すべき問題」や「無くすべき現象」として扱い、解消方法が注目されがちですが、VRC悩み~ティングで大切にしたいことは「この悩みにはどんな意味があるのか」、「自分はこの悩みから何を学べるのか」といった深い問いに向き合うことです。グループワークを通して悩みを人に話し、聴いてもらうことで「スッキリする感覚」と「悩みからの本質的な問いかけ」を参加者の皆さんとじっくり考える時間を共有することができればと日々実践に取り組んでいます。

また悩みは、新しい自分を見つけるチャンスでもあります。悩みと向き合うことで自分の本当の価値観が見えてきたり、誰かに話すことで思いがけない支えや気づきを得られたりします。また、自分ひとりでは思いつかないアイデアやユーモアによって仲間とのつながりが強まることもあります。VRC悩み~ティングでは、悩みを消そうとするのではなく、「悩める自分」に気づき、その声を大切にしながら、他の参加者と安心して語り合い、“悩める人としての主体性”に気づいていただくためのサポートを行っています。悩みを単なる重荷ではなく、人生を豊かにする問いかけだと実感できる時間を皆さんと共有できれば幸いです。

VRChatイベント VRC悩み~ティング 主催:PAY2 毎週水曜21:00~22:30開催